パーキンソン病の進行を防ぐ『リハビリテーション』
パーキンソン病の進行を遅らせるためには、薬物療法と共に、 早期から有酸素運動などの運動や話し言葉の『リハビリテーション』を始めることが大切です。
■運動によるリハビリテーション
早期から始めることで、体の動きを維持できる
「パーキンソン病」があると、無意識のうちに体の動きが小さくなったり、ゆっくりになるので、 運動不足に陥りやすいものです。それに加え、”動きにくいから”といって体を動かさないでいると、筋力や心肺機能が衰えて、 本来の症状よりも悪い状態に見えてしまいます。 こうしたことを防ぐには、パーキンソン病と診断されたらすぐにリハビリテーションを始めることが大事です。 早期から積極的に運動を行うことで、生活に支障のない状態を長く保つことができ、薬の使用量も最小限で済みます。 パーキンソン病は脳の「ドーパミン神経」の減少が原因で起こりますが、動物実験では、運動によりドーパミン神経が 増えるという報告があります。人間で証明することは難しいですが、パーキンソン病の患者さんが運動によって 体を動かしやすくなることは事実です。例えば、2週間の検査入院中にリハビリテーションを受けたところ、 薬については変えていないのに、多くの人の動きや表情がよくなりました。 運動がドーパミン神経の働きによい影響を与えていると考えられます。
●運動の内容と注意点
有酸素運動やストレッチを強めに行うことが大切
パーキンソン病の患者さんに適した運動は、「体力を保つための有酸素運動」「バランスや筋力を保つ運動」 「柔軟性を保つストレッチ」です。事前に必ず担当医に相談して、「心肺機能に異常はないか」 「背骨や股関節、膝などに障害がないか」を確認してください。 また、薬で症状が改善しているときの方が体を動かしやすいので、薬が効いている間に運動を行いましょう。 運動の効果を高めるためには、できるだけ高い強度で、毎日行うことが重要です。 強度が高いほうが、脳の神経が活性化するといわれています。また、パーキンソン病に対する有酸素運動の効果は、 20分以上続けることで得られるとされているので、ウォーキングやジョギングは20分以上行うようにしましょう。 なお、医療機関のリハビリテーション科や専門施設を受診すれば、理学療法士による運動指導を受けることができます。
●話し言葉のリハビリテーション
言語聴覚士の指導を受けたり、自ら大きな声を出す練習を行う
パーキンソン病があると、口の周りの動きにも影響して、「声が小さくなる」「早口になる」「声がかすれる」 「一本調子の話し方になる」「言葉がなかなか出てこない」などの言葉に関する障害が現れることがあります。 これらの症状も、リハビリテーションが有効です。話し言葉のリハビリテーションにはさまざまな方法がありますが、 最近、効果が高いと注目されているのが、「LSVT LOUD」という訓練法です。
◆LSVT LOUD
認定を受けた言語聴覚上の指導を受けながら4週間のプログラムを行います。 パーキンソン病の患者さんは、自分では声が小さくなっていることに気付きにくいので、大きな声を出す練習をします。 また、「おはよう」など日常でよく使う言葉を繰り返すことで、大きな声でハッキリ言えるようにします。
◆自分でできるリハビリテーション
「カラオケで大きな声で歌う」「本や新聞を大きな声を出して読む」といった方法があります。 また、おしゃべりが好きな人の方が言葉の障害が少ない傾向があるので、ふだんから家族や友達と話す機会を多く作るとよいでしょう。 体の動きも言葉も、「使う」ことがとても大事です。毎日大きく体を動かし、大きな声を出すよう心がけましょう。